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離婚Q1

A1,大学生等である子の婚姻費用や養育費について

未成熟子の父母は、子に対する扶養義務を負い(民法877条)、これを子の監護に要する費用の分担義務と言います。婚姻中は婚姻費用に含まれ、離婚後は養育費という形で問題となります。大学生、短大生、あるいは専門学校生(まとめて大学生等といいます。)である子の婚姻費用・養育費(まとめて養育費等といいます。)については、①大学生等は未成熟子か否かが問題となり、未成熟子であれば養育費等が発生します。次に②私立大学等の学費が養育費等に加算されるかが問題となります。

①大学生等は未成熟子か
まず、何歳までが未成熟子なのかですが、必ずしも成人年齢(20歳)までと決まっているわけではありません。
高校を卒業してすぐ働いていれば(稼働能力があれば)、成人に達していなくとも未成熟子とは言えず養育費等は発生しない可能性が高いと言えます。他方で、高校を卒業後に大学等へ進学はしていないが健康上の問題で就労できていない場合には、成人に達していても未成熟子と扱われる可能性があります。
大学生等については、「夫婦の収入や学歴、社会的地位などから子が大学等に進学しても不釣り合いでなければ、大学生も未成熟子と言い得る」というのが一般的な見解です。 加えて大学・短大・専門学校への進学率合わせて8割を超える状況も踏まえ、近時の家庭裁判所での実務は、子が大学生、短大生、あるいは専門学校生である場合には原則として未成熟子として扱われ、少なくとも22歳あるいは大学卒業までの相当期間は養育費が発生するといえます。
大学院への進学については、親の進学状況、収入、社会的地位などを考慮して、未成熟子として扱うか否かが判断されます。
なお、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられますが、家庭裁判所における上記の取り扱いに影響はありません。

②大学等の学費は婚姻費用・養育費に加算されるか
養育費等には、公立学校の費用しか含まれていないため、より高額な大学等の学費の場合に、養育費に大学等の学費(入学金、授業料、通学費用、場合によっては下宿代など)を加算が認められるかが問題となります。
まず、養育費等を支払う側が、従前から大学等への進学を承諾していたなどの事情がある場合には、学費の加算は認められます。ただし、しばしば、承諾していたか否かが争いになることがありますので、可能であれば文書、録音、メール記録などで残しておくのが望ましいでしょう。直接的に大学進学を了承する言動に加え、大学進学率の高い高校への進学を承諾していた、あるいは大学進学予備校へ通うことを了承していたなどの事情も、大学への進学を了承していたという黙示の承諾として扱われます。また、両親と子が同居していた時に既に大学等へ進学していたのであれば、基本的には承諾があったと家、その後離婚や別居になっても学費の上乗せは認められるでしょう。
承諾がない場合も、既に述べた大学等への進学率を前提に、基本的には大学等の学費の加算は認められる傾向にあります。ただし、夫婦の収入、学歴(例えば少なくとも両親のどちらかが大学等に進学しているかなど)、社会的地位などから子が大学等に進学しても不合理でないかが問題となりますし、奨学金や子自身のアルバイト収入から学費の一部を賄えないかが、承諾のある場合に比べ、検討されやすい傾向があります。
加算額の計算方法は様々な考え方がありやや複雑ですが、例えば、単純に大学費用を両親で2分の1ずつ負担する、収入比で負担する、あるいは「大学等の年間の学費から、養育費において考慮されている公立高校の学費25~35万円を差し引き、両親の収入比で分担する(かなり簡略化して説明しています)」などの方法を採用した審判例もあり、調停などでは参考とされることが多いように思われます。

③私立高校の学費は婚姻費用・養育費に加算されるか
考え方は②の大学等の学費と同様です。承諾があった場合には加算が認められます。
ただし、大学等とは異なり、公立高校という選択肢がある分、承諾がなかった場合に加算が認められるかの判断はハードルが高くなります。
承諾がない場合でも、やはり夫婦の収入、学歴、社会的地位などから私立高校への進学が不合理でなければ加算は認められる可能性があります。その他に、私立高校に進学せざるを得なかった事情があるかなど、ケースバイケースです。

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